刑事事件の手続きの流れ
1 捜査
捜査は、捜査機関(通常は警察)が犯罪が発生したと考えたときに、刑事事件とするため、犯人を発見し、証拠を集める手続のことをいいます。
捜査が始まるきっかけとしては、職務質問、被害の申告、通報などがあります。
捜査が開始されると、警察は、関係者からの事情聴取、防犯カメラ等の解析、内偵等をしたり、裁判所から令状を得て捜索、差押え等をします。
被疑者を特定した後に逮捕し、身柄を拘束することもあります。
2 逮捕、勾留
逮捕されると、最大72時間身柄が拘束されることになります。
逮捕された場合、その後に勾留という原則10日間、最大20日間の身柄拘束が行われることが少なくありません。
勾留の場所は、警察署にある留置施設とされることが通常です。
逮捕・勾留の間、捜査機関は被疑者の取調べを行うほか、証拠収集活動を行います。
3 起訴・不起訴
捜査が完了すると、検察官は被疑者にどのような処分をするか決めます。
この処分は、逮捕勾留された事件では、逮捕勾留の期間満了時にされるのが一般的です。
処分には、公判請求、略式起訴、不起訴などがあります。
略式起訴されると、被疑者が罰金を支払うことで事件が終結します。
比較的軽微な事件で、事案に争いがない事件のときに、略式起訴がとられることがあります。
不起訴となれば、事件は裁判所に送られることがなく終結します。
軽微な事件であって刑罰まで科す必要はないと判断された場合(起訴猶予)、被疑者が罪を犯したことに疑いが残る場合(嫌疑不十分)、真犯人が別にいることが判明した場合(嫌疑なし)などは、不起訴となります。不起訴になると、いわゆる前科とはなりません。
処分保留というものもあります。どのような処分をするか勾留期間内に決められない場合になされます。いったん釈放されますが、捜査は継続され、捜査完了時に処分が決められることになります。
4 保釈
起訴された時点で身柄拘束されていない場合は、通常はそのまま自宅で生活していくことができます。
しかし、反対に、起訴された時点で逮捕・勾留されていたときは、起訴後もそのまま勾留され続け、判決までそのまま拘束されてしまうのです。起訴後、一定の時間が経過した段階で、拘置所に移動させられます。
釈放を認めてもらう方法が用意されています。それが、保釈という制度です。
保釈というのは、起訴された後、保釈金(正確には、保釈保証金)というお金を裁判所に預けることで、判決までの間、釈放を認めてもらうという制度です。
この保釈が認められ、保釈金を納めれば、身柄拘束から解放されるのです。
5 公判
起訴されると、裁判所で公判が行われます。
公判には、被告人のほかに、裁判官、弁護人と検察官も出席します。
そこで、起訴された事件について、審理を進めることになります。
第1回公判は、起訴されてから1~2か月後に指定されます。
多くの事件が、第1回公判で結審まで進みます。手続きは、冒頭手続き(罪状認否等)→証拠調べ(証人尋問等)→弁論(求刑等)の順番で進みます。第1回公判で結審しなければ、引き続き公判が行われます。
公判と公判の間は、通常は1か月程度の間をおきます。
6 判決
結審すると、判決を言い渡す公判を開きます。
判決の際には、結論とその理由が述べられます。
有罪判決には、大きく、実刑判決と執行猶予判決があります。
執行猶予判決になればその直後に釈放されますが、実刑判決では、そのまま身柄拘束が続き、釈放してもらえません。
7 控訴・上告
判決の結論に不満がある場合には、高等裁判所に控訴することができます。
通常、刑事裁判は簡易裁判所か地方裁判所で行います(大半は地方裁判所です)。
しかし、その判決が間違っているとか、重すぎるという場合には、高等裁判所でもう一度判断しなおしてもらうことができるのです。
本当は無実なのに有罪判決を受けたとか、執行猶予をつけるべきなのに実刑判決だった、などの理由で控訴を行うことがあります。
控訴を行い、高等裁判所での判決にも不満がある場合には、最高裁判所に上告をすることもできます。
しかし、実際には上告できる場合は非常に限定されており、上告が認められることはほとんどありません。
控訴や上告をしないか、上告がしりぞけられた場合には、その判決が確定し、争うことはできなくなります。
8 刑の執行
有罪判決が確定した場合には、裁判所が命じた刑の執行を受けなければなりません。
罰金刑であれば、罰金額を納付しなければなりませんし、懲役の実刑判決であれば刑務所に服役をします。
また、裁判に関する費用の支払いを命じられることもあります。
刑の執行を終えた段階で、刑事手続きは終了といえるでしょう。