解雇の有効・無効の判断基準
1 解雇の有効性の一般的判断基準
解雇に「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が認められない場合には、解雇は無効となります(労働契約法16条)。
解雇の理由として会社が挙げることが多いものとしては、1.能力不足、2.病気・負傷による労働能力喪失、3.経営上の必要性(整理解雇)、4労働者の規律違反(懲戒解雇)があります。
後述するように、解雇の社会的相当性は容易には認められないことが多いといってよいと思います。
2 能力不足
単に他の従業員より成績が悪いというだけでは解雇事由に該当しないのが通常です。
また、能力に大きな問題があるとしても、いきなり解雇するのでなく、教育訓練や本人の能力に適した配置転換をするなどの措置を尽くすことが要求される傾向にあります。
3 病気・負傷による労働能力の喪失
病気・負傷による労働能力の喪失を理由にされた解雇の有効性の判断に当たっては、①病気・負傷の存在が労働能力に与える影響の大きさ、②病気・負傷の回復の可能性、③他の業務等への配転の可能性等が考慮されます。
企業によっては、一定期間休職させ、所定の休職期間が経過したときに、自動的に退職扱いにするか、解雇を行うとする内容の就業規則を設けていることがあります。
そのような就業規則がある場合には、休職期間経過時点で復帰できるか否かが問題になります。
なお、病気・負傷が業務上のものである場合には、その休業期間とその後の30日間は原則として解雇できません(労基法19条)。
4 整理解雇
経営不振などの経営上の必要性により人員削減の手段として行う解雇は整理解雇と呼ばれています。
裁判例上は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの妥当性を考慮して判断することになっています。
5 懲戒解雇
懲戒解雇とは、業務命令違反、職場規律違反などといった企業秩序違反行為に対する懲戒処分として行われる解雇です。
懲戒処分が有効とされるためには、①懲戒処分の根拠規定の存在、②懲戒事由への該当性、③相当性が必要です。
懲戒解雇は最も重い懲戒処分であり、例えば横領・背任など極めて重大な違反行為に対してされるものです。
【関連条文】
労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。