解雇を争うときの解雇予告手当の扱い
使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない使用者は30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされています(労働基準法20条1項)。
30日前の予告がされていない解雇がなされたときに、同条に基づき支払われるべき金銭を解雇予告手当といいます。
ただ、この解雇予告手当の支払いの有無は、解雇を争うときにはあまり関係がないことです。
解雇を争うときに重要なことは、解雇が無効といえるか否かですが、解雇予告手当が支払われていないとしても解雇は無効とならないからです(最高裁昭和35年3月11日判決)。
解雇の有効性は、解雇に客観的合理的理由と社会的相当性があるか否かから判断されます(労働契約法16条)。
また、解雇予告手当の支払いは解雇が有効であることを前提としていますから、解雇の無効を主張するのであれば、解雇予告手当の請求をすべきでないことにもなります。
会社から解雇予告手当を勝手に振り込まれたときは、解雇は無効であるから解雇予告手当を返還すると会社に連絡して、(会社は受け取らないでしょうから)保管しておいて後に未払賃金に充当するということになるでしょう。
【関連条文】
労働基準法20条
1 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となったた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
【関連判例】
使用者が労働基準法20条所定の予告期間を置かず、また予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、または予告手当の支払をしたときに解雇の効力を生ずる。
(最高裁昭和35年3月11日判決)