内定取り消しに関する相談
内定取り消しとは
会社から内定をもらえば通常その時点で労働契約が成立すると考えられます。
したがって、内定を取り消すことは、成立した労働契約を一方的に解除することを意味するので、解雇に当たることになります。
解雇は、客観的合理的理由と社会的相当性がなければ無効となります(労働契約法16条)。
内定取り消しに対する制約
新規学卒者の場合は、内定から就労開始まで間があるため、一定の解約事由が予め定められ、会社が就労開始まで解約権を留保するとしていることがあります。
しかし、前述の通り、内定取り消しは解雇に当たるため、その留保された解約権行使についても客観的合理的理由と社会的相当性が必要となります。
最高裁は、内定取り消しの理由は、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる」としています。
例えば、大学を予定通りに卒業できなかった場合には、内定取り消しはやむを得ないとされることが多いでしょう。
しかし、内定中の会社研修等への不参加、経営上の理由等による内定取り消しは基本的には許されないというべきでしょう。
内々定の取り消しの場合は
内々定の場合は、いまだ労働契約が成立していないとされることが多いでしょう。
ただし、会社との間のやり取りの内容、取り消しの時期などによっては、内々定者の入社への期待を侵害したとして、損害賠償請求ができる可能性があります。
内定辞退について
労働者はいつでも労働契約を解約できるので(民法627条1項)、内定者はいつでも内定を辞退することができると考えられています。ただし、当然のことながら内定を辞退することを決めた場合には速やかに会社に報告すべきです。
中途採用の場合
中途採用の場合には、労働条件についての話し合いが行われることがあることから、どの時点で労働契約の成立が認められるかがより問題となることがあります。
給与額、就労開始日等についての合意の有無が労働契約成立の有無に影響するでしょう。
労働契約の成立が認められれば、取り消しは解雇規制に服することになり、解約権の行使に客観的合理的理由と社会的相当性が必要となるのは新規学卒者の場合と同じです。
労働契約がまだ成立したと認められない場合でも、入社への期待を侵害したとして損害賠償請求をできる場合があります。
【関連判例】
採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが右採用内定に留保された解約権の趣旨、目的に照して客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる。
(最高裁昭和54年7月20日判決)