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給与、退職金の減額について~山梨県民信用組合事件

会社から景気が悪いなどと言われ、給与の減額を求められることがあります。
給与は契約の内容となっているので会社が一方的に変更することは原則できません。

給与・退職金の減額に労働者が同意すれば、原則として同意後の給与額等しか請求できなくなりますが、裁判所は、同意があったかについては慎重に判断すべきとされています。労働者は会社の指揮命令に服すべき立場に置かれていますし、必要な情報を自ら収集する能力にも限界があるからです。
賃金、退職金の減額を受け入れる旨の労働者の行為があり、その行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要であるとされています。

退職金規定の変更に同意があったか否かについて、今年の2月に最高裁が興味深い判決を出しています。山梨県民信用組合事件と呼ばれているものです。
退職金規定の変更についての同意書に労働者の署名押印はなされている事案です。
少し長いですが引用します。
「管理職上告人らが本件基準変更への同意をするか否かについて自ら検討し判断するために必要十分な情報を与えられていたというためには、同人らに対し、旧規程の支給基準を変更する必要性等についての情報提供や説明がされるだけでは足りず、自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高くなることや、被上告人の従前からの職員に係る支給基準との関係でも上記の同意書案の記載と異なり著しく均衡を欠く結果となることなど、本件基準変更により管理職上告人らに対する退職金の支給につき生ずる具体的な不利益の内容や程度についても、情報提供や説明がされる必要があったというべきである。」
非常に簡単に言うと、当該具体的事案において、どのような不利益が生じるか具体的に事前に説明した上で同意を得る必要があったというものです。
実務的には、会社から変更についての重要事項説明書が渡され署名押印を求めるという運用がより広がることになるのかなと思う次第です。

(山崎)

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