民泊の法的問題点
最近、「民泊」の利用が急速に拡大するとともに、様々な法的な問題点が浮上してきています。
行政法上の問題(旅館業法等)がクローズアップされることが多いですが、民事法上の問題点もあります。
1 賃貸物件において、民泊サービスが利用された場合
賃貸借契約においては、契約書に転貸借を禁止する条項がある場合に限らず、原則として、賃貸人の承諾を得ないまま転貸借をして、第三者に使用収益をさせた場合には、賃貸借契約の解除事由になるとされています(民法612条)。
そこで、民泊に転貸の議論がそのままあてはまるかについては検討の余地がありますが、賃貸人の承諾を得ないまま、賃借人が民泊サービスを提供する場合にも、同様に解除事由とならないか問題となりうるものと考えられます。なぜなら、民法が無断転貸を禁止している趣旨は、賃貸借が当事者の個人的信頼関係を基礎とする継続的法律関係であり、第三者に賃貸物件を使用収益させることは、契約の本質に反すると考えられるところ、民泊サービスで第三者に賃貸物件を使用収益させた場合も同様に考えることができるからです。
また、賃貸借契約において、賃貸物件の用法を、「住居」など特定の目的に定めている場合には、用法違反が問題となる可能性もあります。
実際の民泊の態様や経緯等の事情によっては、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたとして、賃貸借契約の解除が認められる可能性があるため、賃借人としては、民泊を利用する前に、賃貸人や管理会社にこの点を確認しておくべきでしょう。
2 分譲マンションにおいて、民泊サービスが利用された場合
最近の裁判例として、分譲マンションの所有者が、民泊サービスを提供していたケースにおいて、マンションの管理組合が民泊の差止の仮処分を申し立てた事例において、差止が認められました(大阪地裁平成28年1月27日)。
区分所有法57条では、区分所有者の共同の利益に反する行為について停止を請求等できることが定められています。
実際のマンションの管理規約において、どのように定められているのかにもよりますが、住宅用として想定されているような場合には、民泊サービスを提供することは、管理規約違反となると考えられます。
なお、国土交通省の通知によれば、国家戦略特区として民泊が認められた建物を対象に、管理規約に「部屋を民泊に使用できる」や「使用してはならない」などの民泊の可否について明記するよう要請した、ということなので、今後管理規約でも規定の整備が進むことが予想されます。
(弁護士 中村恵)