財産分与における特有財産の主張
夫婦共有財産
離婚するときには夫婦で協力して築き上げた財産を二人で分けることになります。これを財産分与と呼んでいます。
財産分与の対象となる夫婦共有財産には、預金、不動産、株式、生命保険の解約返戻金、退職金等があります。
財産分与の割合は2分の1ずつとするのが通常です。
例えば、妻が財産分与請求をするときの計算式は以下のものとなります。
(=夫名義の資産合計―夫名義の負債合計)+妻の純資産額(=妻名義の資産合計―妻名義の負債合計)÷2―妻の純資産額
特有財産
結婚前に有していた財産、別居後に得た財産、相続により取得した財産などは、夫婦で協力して築き上げた財産とはいえないので、特有財産となり、基本的に財産分与の対象となりません。
例えば、結婚前に貯めていた預金(結婚後に得たお金と混在したときは問題となります。)、結婚前に購入した不動産(住宅ローンが残っている場合を除く)、親の死去に伴い相続により取得した財産などは特有財産であるとして、財産分与の対象となりません。
結婚前から入っていた生命保険の解約返戻金については、独身時代の保険料支払いに対応する部分を除いて財産分与の対象となります。
結婚前から働いていた会社の退職金については、独身時代の労働に対応する部分を除いて財産分与の対象となります。
特有財産の立証
夫名義又は妻名義で存在する財産は夫婦共有財産と推定されます(民法762条2項)。
そのため、特有財産であると主張する当事者が特有財産であることを立証する必要があります。
預金
結婚前の預金は特有財産であるため、別居時の預金残高から結婚時の預金残高を引いた差額が夫婦共有財産であるとも思えます。
例えば、結婚時に100万円の預金があり、別居時に同じ口座に300万円の残高があったような場合、結婚時の100万円は特有財産であるから、夫婦共有財産は200万円であると主張されることが考えられます。
確かに、別居時まで入金のみがなされていたときや、別居時まで出金のみがなされていたときには結婚前の預金部分の特定が可能です。
しかし、結婚後に入出金が繰り返されているときは、結婚前の預金と結婚後の預金が混在するため、どの部分が結婚前の預金であるのか特定が難しくなります。
つまり、出金が行われたときに、その出金の原資が結婚前の預金であるのか結婚後の預金であるのかわからないということです。
同じような問題は、結婚中に、親族からの贈与又は相続により得た金銭が預金口座に入金された場合にも生じます。
まず、特有財産であることを主張する当事者は、当該口座に入金された金銭が親族からの贈与又は相続により得た金銭であることを立証する必要があります。
そして、入金後に当該口座において入出金が繰り返されているときには、結婚前の預金と同じく、夫婦共有財産との混在の問題が生じることになります。
不動産
結婚前に購入していた不動産は特有財産となるのが原則です。
ただ、結婚後に住宅ローンが残っていたときには、夫婦共有財産から住宅ローンが支払われることになります。
この場合には結婚後の元金減少額を考慮して財産分与の対象となる部分を特定していくことになるでしょう。
結婚後に購入した不動産は夫婦共有財産となるのが原則です。
ただ、不動産の購入のために、一方配偶者の親族から援助を受けていることがあります。
親族から受けた贈与は夫婦共有財産とならないため問題となります。
まず、特有財産であることを主張する当事者は、親族からの贈与が不動産の購入資金として使われたことの立証をすることになります。
そのような証明がなされた後に、不動産の購入価格中に特有財産出資額が占める割合を算出し、分与対象財産部分を特定することになります。