債務整理の基本メニュー
「多重債務」や「債務超過」という言葉を聞いたことはありますか?
ここで言う「債務」というのは,平たく言うと借金のことです。借金が多く重なってしまい,自分の収入・財産を超過してしまって,もう当初の約束通りの支払をすることができない状態のことを「多重債務」・「債務超過」と呼んでいます。
このような状態はもちろん好ましい状態ではありません。そこで一旦「債務」の状態を確認して,それを整理することで,また健全な家計状況に戻すことを「債務整理」と言います。これには,色々な方法があるのですが,大きく3つの代表的なメニューを今回のコラムでご紹介します。
(1)任意整理
任意整理というのは,いわゆる交渉のことです(任意整理という法的な手続があるわけではありません)。
「不景気で収入が減ってしまった(ボーナスがカットされた)」,「急な出費が重なって預貯金が減ってしまった」…など色々な事情から,毎月の支払が厳しくなってしまったけれども,例えば返済期間を延長して毎月の支払金額を減らしたり,ボーナス払いをなくしてもらえたりすれば,今後も支払っていけるというような場合が典型的な場面になります。多くの場合は,弁護士がこれまでの取引履歴を取り寄せた上で利息制限法という法律のルールに従って債務の金額を計算し直します。そして,残額についての支払方法を貸主と交渉して,支払できる内容で和解する(改めて約束をし直す)という方法で債務を整理します。
これは,交渉ですので貸主の側に了承してもらうことが大前提にはなりますが,もし話し合いがまとまれば,裁判所での手続を取ることもなく,債務を整理することができます。
(2)破産
破産というのは,裁判所における手続で,その時点で持っている財産を債務の金額に応じて平等に分配して,足りない部分は免責してもらう(借金を帳消しにしてもらう)という手続です。生活の再建のために必要な財産として一部の財産を残せる以外は,全部借金の支払いに充てますが,それでも足りない部分は免責決定を受けることで借金がなくなることになります。
任意整理では支払うことが難しく,また手元に残したい不動産なども特にないという場合に,債務整理の方法として非常によく使われる制度です。
破産は,本人の生活再建のために貸主に負担を強いる制度なので,財産隠しや不平等な支払はもちろん認められません。実際の手続では,通帳のコピーや車検証などの資料を添えて,財産状態をきちんと報告することになります。
ちなみに,普通の借金は免責を受けることによって消えますが,税金関係や養育費など,破産手続では免責されない債務もあります。
(3)個人再生
こちらも裁判所における手続ですが,債務を最大80%カットして(どのくらいカットされるかは事案によります),3年~5年の間に分割払いすることで,債務整理を行うというものです。再生計画というものを作って,そのとおりに支払うことで,債務の一部を免除してもらうことができます。
個人再生の場合は,財産を手元に残すことができるというのが破産手続との大きな違いです。ですので,自宅を手放したくないし,ある程度の収入もあるので住宅ローンは何とか支払うことができるけれど,その他の借金の支払の負担が大きすぎるという場合に,よく利用される制度です。
以上が代表的な債務整理の方法です。
これ以外にも,例えば,利息制限法で計算し直したら払い過ぎていたのでお金を返してもらう(過払金請求),随分と昔の借金だったので破産するまでもなく時効で消えてしまっていた(時効消滅)などといった場合もあります。
「債務整理」というと堅苦しい・難しそうなイメージがあるかもしれませんが,このように色々なメニューがありますし,私たちもできるだけ分かりやすくお話しするように努めますので,どうかあまり身構えることなくお気軽にご相談下さい。
(弁護士 押見和彦)