姻族関係終了届とは
皆さんは,「家族」「親戚」というと,どのくらいの範囲をイメージしますか?
夫婦,父・母,息子・娘,兄弟姉妹,祖父母…,あるいは,叔父さん・伯父さんや叔母さん・伯母さん,従兄弟・従姉妹などもイメージされる方もいるかもしれません。
法律の世界では「親族」といった場合の範囲が決まっています。
民法725条で(1)六親等内の血族,(2)配偶者,(3)三親等内の姻族が「親族」とされているんです。漢字が多くてややこしいですが,血族というのは血がつながっている人(例えば,実父・実母や子,兄弟姉妹です)のことで,姻族というのは結婚(婚姻)によってつながっている人(例えば,義父・義母や,夫又は妻の兄弟姉妹です)のことです。
具体的には,妻から見た場合,(1)妻の父・母や息子が血族,(2)夫が配偶者,(3)夫の父・母が姻族ということになります。
さて,家族同士がお互いに助け合うということが法律には定められているのですが,具体的には扶養義務という形で問題となることがあります。
例えば,妻が夫の実家で夫の両親と同居して暮らしていたところ,夫が先に他界してしまったという場合,残された妻と夫の両親とが姻族であることに変わりはなく,法律上は「親族」ということになります。そのため,場合によっては,妻は,夫の両親を扶養する(夫の両親の面倒を見る)ことになります。
ここで,妻と夫の両親との関係が良好であれば特に問題はないのかもしれませんが,もしも関係が険悪だった場合に,それでも妻は夫の両親の面倒を見なければならないのでしょうか?
このような場合,妻は,夫の両親との姻族関係を終了させることで法律上の「親族」ではなくなるという方法と取ることができます。
手続はとても簡単で,妻が役所の戸籍係に行って「姻族関係終了届」を提出すれば完了です。夫の両親と話し合ったり,同意してもらったりする必要も特にありません(たとえ夫の両親が反対していても終了させることができます)。また,この手続には期間制限もなく,いつでもすることができます。
妻が夫と離婚した場合は夫の両親とも当然に「親族」ではなくなりますが,死別の場合は姻族関係を終了させない限り「親族」です。ちなみに,少しややこしいですが夫と死別した後に縁あって再婚したという場合も,前の夫と離婚したわけではありませんので,やはり妻と前の夫の両親とは姻族関係は続いています。
今回のコラムでは,法律上の「親族」と義理の両親との関係について,ご紹介いたしました。皆さんの感覚と一致していましたでしょうか?
これからも様々な法制度等をご紹介していきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
(弁護士 押見和彦)