別居中(離婚成立前)に児童手当の振込先を変更する方法
離婚を悩まれた方の多くは、経済事情を気にされると思います。特に、お子さんがいらっしゃれば、今後育てていくために必要なお金のことを心配して当然だと思います。
もちろん、十分な金額の養育費を支払ってもらえれば不安も減るのですが、トラブルになっている相手からスムーズにお金をもらえることは残念ながらレアケースです。
それよりも行政からいただける各種手当は、確実にいただけるものですし、実際にこれからシングルになる際に大きな助けになりますので、必ずお近くの役所の子育て支援課さんに相談することをお勧めします。
さて、今回のコラムでは、その手当の中でも特に「児童手当」について、ご紹介しようと思います。
「児童手当」は、児童を育てる保護者に対して支給される手当のことです。多くのご家庭では、父親である夫名義の口座を受取口座として受給されているのではないかと思います。
では、夫と別居して、母親と子どもが一緒に生活するようになったとき、「児童手当」はどうなるのかというと…、何もしなければ引き続き夫名義の口座に支給されます。
「実際に一緒に暮らして子どもさんの面倒を見ているのが母親なのにおかしい!」という声をよく聞くのですが、本当にその通りなので、この後で書く方法を参考にして、子どもさんのためにも離婚する前から母親が受給できるように検討していただけたら嬉しいです。
まず、最初のハードルが「世帯」になります。
これは、実際には別居しているのだけど、住民票は動かしていないため、世帯が一緒になっている場合の問題です。
別居のタイミングで住民票を移していれば、この問題は解決しますので、特に大きな問題がなければ住民票を移されると良いかと思います。
ただ、「出て行った夫が住民票を移してくれない」とか、「夫が怖くて新しい住所を知られたくないから住民票を移せない」といった方もいらっしゃるかと思います。
その場合は、「世帯分離」という方法を窓口にご相談ください。
同じ住所地で世帯が二つということで住民票が別々になります。こうすることで、母親が世帯主で子どもさんがそこに入っているという状況になります。
しかし、これだけだとまだ児童手当は受け取れません。
住民票が別というだけで、離婚の前段階なのか単なる単身赴任なのかの区別がつかないため、「生計を維持する程度の高い方(=収入が高い方)」に振り込まれるのです。
そこで、この二つ目のハードルを越えるためのステップとして、「紛争状態になっていること(トラブルになっていること)」を窓口に説明することになります。
もう離婚調停中という段階であれば、単に調停の書類を窓口に持っていけば対応していただけることが多いかなと思います。
「期日通知書」とか、「期日請書」といった調停中であることがわかる書類を提出してくださいねって言われることが多いです。
まだ調停前の段階であれば、決まった書式はありませんが、とにかく離婚協議中ということがわかるものが必要になります。
代理人の弁護士として「離婚協議中です」という書類を作成したこともありますし、報告書の形でトラブルになっていることを明らかにしたこともあります。
これで、窓口の方でも必要な書類が整えば、離婚前の別居段階であっても「児童手当」を母親が受け取ることができます。
いかがでしたでしょうか?
まずは「世帯」を分けて、次に「離婚のことでトラブルになっている」ことを明らかにすれば、ちゃんと子どもさんのための「児童手当」を受給することができることがほとんどです。
「児童手当」はお子さんのためのお金ですから、夫婦の関係がどうであれ、子どもさんのために頑張っていただければと思います。もしも「私の場合はどうなんだろう…?」と分からないことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
(弁護士 押見和彦)