窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い
犯罪なんてテレビの中の話で自分には関係ない、そう感じる方は多いかもしれません。
しかし、一口に犯罪といっても、その内容は多種多様です。
私は先日、自転車を盗まれました。
このような場合、該当する犯罪として考えられるものは、窃盗罪(刑法235条、10年以下の懲役)と占有離脱物横領罪(同法254条、1年以下の懲役)の二つです。法定刑の重さが全く違いますが、この二つの犯罪を区別するポイントは、不法に領得された物を占有していた者が存在したか、という点にあります。刑法における占有とは、物に対する事実上の支配を意味するとされていますが、「物に対する事実上の支配」といっても一義的にその内容を確定することは困難で、最終的には個々の物の種類・形状等に即して、具体的な事情から判断せざるを得ないと考えられています。
例えば、既にボロボロな自転車が寂れた場所に置いてあったような場合、勝手に乗り逃げした犯人も「棄ててあると思った」と認識していることがあります。そのようなケースでは軽い占有離脱物横領罪が成立することも考えられます。
しかし、今回私が盗まれた自転車は、ホームセンターで買った安物ですがそこまでボロボロではなかったですし、盗られた場所もコンビニだったので(買い物している間に盗られました…)、少なくとも最初に乗り逃げした犯人は窃盗罪に問われることになるでしょう。法律上重大な犯罪であるとの認識が低いのであれば残念なことだなと思います。
(弁護士 阿部大介)